《1》哲夫おじさんは、ポリポリと頭をかいてる。どうしよう……?
《2》ようし!こうなったら……!
《3》どうしよう……?
《4》「本当に次の話に移っていいのかな?ははっ」
《5》山で一番恐ろしいものが何かわかるかい?
一人で山を登っていた哲夫は、一雨来そうな雰囲気を感じて下山することにした。やがて背後から人の気配を感じたので振り返ってみたが、そこには誰もいない。
こんな体験したことないかい?
《6》え!?ないの……?本当に?
《7》一人で山に登ると、山で死亡した人間の幽霊がついて来ることがあるらしい。哲夫が聞いた足音も幽霊のものだったようだ。こういう時、一番有効な対処の仕方は無視するのが一番いいと聞いていた哲夫は下山を続けるが、やがて雷鳴が轟くと、例の足音はものすごいスピードで哲夫を追い抜いていった。しばらくすると雨が降り出してきたので、山小屋を見つけた哲夫はそこで雨宿りをすることに。
山小屋の中は予想していた以上に暗く肌寒かった。こういう時は、まず何をするべきだと思うかい?
どうだい?おじさんと一緒に、世界の浪漫を求めて旅に出ないか?
《8》あんまり深く考えずに返事しちゃったけど、大丈夫かなぁ……。
《9》火を起こし周りが明るくなると、焚き火の向こうに膝を抱えてうずくまる男の姿が見えた。影があるので幽霊ではなさそうだが……。小屋の中が暖まってきても、男は微動だにしない。
声をかけてみた方がいいんだろうか?どうするんだい?
《10》男は疲れて眠っていただけだった。目を覚ました男と哲夫は意気投合し、焚き火を囲んで熱く語り合った。日が暮れても雨がやむ気配はなく、二人は小屋で夜を明かすことに。男はザックから豪華なご馳走を次から次へと出してきて、哲夫にもすすめてきた。そして食事がすむと夜を徹して語り合い、翌日、日が高くなってから、再会を願って別れたのだという。
どうだい?冒険家っていいもんだろう?
《11》哲夫は男を放っておくことに。やがて小屋のすぐそばで雷が落ちたような大音響がすると、小屋の戸がひとりでに開き、男は嵐の中へ一人出て行ってしまった。翌日になって雨がやみ、哲夫は下山することにしたが、例の男の姿を見つけることは結局できなかったという。
彼に出会ったのは錯覚だったのだろうか。どう思うかい?
《12》「今度のゴールデンウィークは一緒に冒険だ!」と、勝手に決める哲夫。
どこか行ってみたい所はないのかい?
焚き火の向こう側に現れた男は哲夫の影だった。山には魔物がすんでおり、太陽が地平線にかかる頃に現れるが、決して凝視してはいけないのだという。哲夫はあわてて目をそらし、やがて眠ってしまった。そして気がついたときには朝になっていたのだった。
話が終わると哲夫は豪快に笑った。しかし主人公は思い返す。哲夫は昔はもっとおっとりとした性格で、毎日午後三時になると紅茶を飲んでいたり、親戚が集まった時も、一人窓辺で詩集を読んでいたりしていたのだが……。山が舞台で、人と影が入れ代わってしまう物語が昔あったけど、果たして目の前の哲夫は本物なのだろうか?(次の人の話へ)
山小屋で出会った男と別れた後、哲夫が後ろを振り向くと、彼の姿も山小屋も見当たらなかったという。
その話を聞いた正美は顔を青くして言った。哲夫は悪魔に魂を取られてしまったのだ。山小屋もご馳走も悪魔の罠で、哲夫は食事を得る代わりに命を失ってしまったのだ、と。
哲夫の身体がグラリと揺れ、畳の上に倒れた。(ゲームオーバー)