哲夫の話が終わり、ずいぶん遅い時間になった。もうお開きにした方がいいのだろうか?
いざ布団に入るとなかなか眠れない。何か、いい方法あったかしら……。
のどが渇いたので水を飲みに行きたいが、起きるのが面倒くさい気もする。
うーーーん、どうしよう……?
家の中はしんと静まりかえっており、自分だけが取り残されたような気さえした。本当に、みんな眠ってるだけなのだろうか?
……なんだか不安だわ。
しかし、誰も起きてこない。もう一回叫んでみようか……?
声に気付いたみんなが、何事かと起きてきた。良夫が「一人でトイレに行くのが怖いんだろ!」といいだし、泰明は「本当なのかい?」と聞いてきた。
どうしよう?みんなの気配がなくって不安だった……なんていったら、また良夫に笑われちゃう。
ヒツジの数が二万八千九百五十六匹になっても眠れず、ふと気付くと障子の外が明るくなっていた。結局一睡もできなかった主人公が部屋の鏡を見てみると、ボサボサの髪、腫れぼったいまぶた、黒く縁取られた目の下のくま、と、見るも無惨な顔が映っていた。
怖い話って……。このことだったの…………!?(END)
身体を起こそうとしたが、動かない。息苦しくなり目を開けると、そこにはみんなの姿が。
「あれだけ怖い話をした後に、何も起こらないっていうのはないよね」
「そうだよ。これじゃあ、せっかくのシナリオが台無しだ」
「そうですわね。物語には、悲劇のヒロインが必要ですもの」
「よかったなぁ、前田家の伝説として、永遠に語り伝えられるんだぞ」
「そうよ、開かずの間の伝説と共にね」
「俺、学校に行ったら絶対自慢するからな。『俺の親戚の女がさぁ、開かずの間で怖い話をした夜にさぁ、突然死んじゃったんだ……』って感じでさぁ……」
泰明が笑いながら首を絞め、誰も助けようとはしなかった。(ゲームオーバー)
襖を開けて由香里の泊まっている部屋を覗くと、首筋から血を流して横たわる由香里と、口許を血でぬらした正美の姿があった。「あなたも飲みます?喉の渇きには、これが一番ですわよ」
私に、由香里姉さんの血を飲めっていうの!?
台所に着いて、水をコップに入れると、自分の顔と、その後ろにもう一人が映っているのが見えた。振り返った瞬間、出刃包丁の刃が首筋を切り裂く。かすんでいく主人公の目に映ったのは、見たこともない男の顔だった。(ゲームオーバー)
台所に着いて水を飲み、部屋に戻ろうとしたが、部屋の隅に人がうずくまっているのに気付いた。その人は頭を抱えるようにして、苦しげなうめき声をあげている。「大丈夫ですか?」と声をかけると、刑事が現れ、そのうずくまっていた人を逮捕した。
うずくまっていた人は逃走中の強盗殺人犯で、逮捕した刑事は法事に来れなかった和弘おじさんであった。
どうやら殺人犯は、主人公の叫び声で耳鳴りがしたため、動けなかったらしい。(END)