正美が見習い看護婦だった時の話が語られる。
正美が研修に行っていた病院の最上階には、「VIPルーム」と呼ばれる大きくて豪華な病室があり、そこには中山さんという一人のおばあさんが入院していた。
正美が初めて彼女の病室へ行ったとき、中山さんが正美を迎えると、正美の頭の中にある風景が浮かんだという。
《A》あなたは、そんな経験があるかしら?
《B》中山さんは正美を気に入ったようだった。自分を孫だと思ったのだろうか。それとも病気のせいで気弱になっていたのだろうか。
どちらだと思います?
《C》ある日中山さんは、自分は本当は病気ではなく、毒を飲まされているのだといいだした。正美は疑わしく思ったが、彼女の体のことを考え、信じます、と答えた。
あなたも、私の立場だったら、同じことをするでしょう?
《D》中山さんは、「親族は、みんな私の財産を狙ってるのさ。助けてくれたら、あんたに遺産を残すよ」といった。
彼女のいうことを、聞いてあげますか?
中山さんの話によると、中山さんの家の庭には正美が見たような古井戸があり、底に黄金が眠るといういい伝えがあるため、みんなが覗き込んで危ないからフタをしてあるのだという。
その話を同期の高野に話すと、高野はその家に行ってみようと誘い、二人は中山家にある古井戸までやってきたが、高野は井戸のフタを開けようとした。
話は変わるけれど、あなた、この日本に生まれたことを、幸せだと思っていて?
正美が高野を押しのけて井戸の中を覗き込むと、ウロコのようなものが見え、黒い大きなものが飛び出してきたという。
主人公はそこまで聞くと、思わず泰明にすがりついた。正美が頬に手を当てると、ファンデーションの下からウロコが…。しかしそれは正美のイタズラであった。夕食出た魚の皮を使って仕込んだのだという。
一息ついて、次の話をしようとしたとき、主人公の頭に一つの疑問が浮かんだ。今日の夕食にウロコのついた魚なんて出ただろうか?それに、怖い話をすることも急に決まったこと……。(次の人の話へ)
高野を止めようとすると、井戸から出た青白い手が高野の腕をつかみ、高野はそのまま井戸の中へ引きずり込まれてしまった。そして、逃げようとする正美の足にも例の手が……。
気がつくと正美はナースステーションで婦長に肩を揺すられていた。夢だったのかと思い高野を捜すと、高野なんていう看護婦はいなかったことになっていた。勤務に戻った正美が中山さんの病室に行くと、中山さんが耳元でささやいた。「なんだ……生きていたのかい」と。
あの井戸の中にいたのは中山さんの妹で、高野はそれの犠牲になったようだ。(次の人の話へ)
ある日ベッドに寝ていた中山さんは正美に、いつもよくしてくれているお礼に財産を受け取ってくれ、といいだした。
あなただったら、受け取りますか?
中山さんが亡くなり、正美が受け取ったのは中が空っぽの小さな箱だった。しかし、その箱からは一日に一個ずつ、純金のコインが現れ、正美はあっという間にお金持ちになってしまったという。
私のこと、うらやましいと思うかしら?
正美は受け取りを拒否したが、受け取ってくれないと治療を受けない、といわれ承諾してしまう。中山さんが亡くなり、正美が受け取ったのは小さな箱だった。箱を開けると、目の前にいつか見た例の風景が浮かび上がり、その洋館のドアから小さな人間が出て来ると、正美の口の中に入ってしまった。それ以来正美の体中にその顔が現れるようになったのだが、その代わり、勘が良くなるようになったという。中山さんがその力で財産を築いたように、正美もこの力を有効に使ってみせる、といった。(次の人の話へ)
中山さんは正美に、ここから逃がしてほしいと頼んだ。しかし、看護婦が病院から患者を連れ出すわけにはいかず、ごまかしながら毎日が過ぎていくうちに中山さんは亡くなってしまった。
中山さんは正美を恨み、それ以来正美の体中に、いやらしくにたにたと笑う人の顔が現れたという。顔を取るため、霊には霊をぶつけるのが一番だとわかった正美はこの集まりに参加したのだ。(次の人の話へ)
中山さんは正美に、自宅近くの郵便局留めになっている荷物を取ってきてくれと頼んだ。荷物は五十センチ四方の紙の箱で、中からカサカサ音がしていた。箱を受け取った中山さんは、正美に話をしてくれた。
中山さんが少女だった頃、近所に昆虫の研究をしている青年がいた。彼は体が弱いにもかかわらず、寝る間もおしんで研究に没頭していたのだった。
私なら、きっと重い病気にかかってしまいます。同じ状態になったら、あなただってそうでしょう?
ある時、彼の家が火事にあい全焼してしまう。それ以来夕闇に浮かびながら燃え続ける虫が目撃されるようになった。中山さんはいった。「あれは、あの人の生まれ変わりだよ。そうでなければ。虫たちがあの人を恋しがって、焦がれて死んでしまうのさ……」と。あの青年は中山さんの初恋の相手だったのだろうか。
やがて、中山さんは容態が悪化し亡くなるが、臨終の瞬間、彼女の指先から小さな炎があがるとついには全身を包み込んで燃えだしてしまった。まるで夢のような光景だったという。
あなたの頭の中の光景は、どんな風に見えて?
青年は研究の途中で血を吐いて倒れてしまい、彼が変わり果てた姿で発見された時、部屋中を無数の蝶が飛び回っていたという。中山さんは「私には、あの人自身が蝶になったように見えたよ。あんな風に美しく死ねるなら、いくらでも出すのにねえ……」といった。
やがて、中山さんの病状が悪くなっていくと、彼女は正美に、自分が死んだら身内より医者よりも早く来て死に顔を見てほしい、とお願いをした。
その数日後、中山さんは亡くなり正美が特別室に駆け込むと、そこには中山さんの体から出てきた真っ白い蝶の大群が飛び回っていた。中山さんは、青年が作り出した肉食の蝶を捜すため全財産をつぎこみ、そしてあの光景を再現して正美に見せたのだろうか。
話が終わると主人公は正美の腕の中からカサカサという音を聞いた。もしかして、あの蝶に卵を産みつけられたのでは…。(次の人の話へ)※隠しシナリオへ
[肉食の蝶]で話を終わらせ、2話目に真田泰明を選択すると、[隠しシナリオ・真田泰明]が出現する。